大会テーマ

「マラソンを科学する」

つくばマラソンは、「マラソンを科学する」という大会テーマのもと、マラソンを様々な角度から考え、「科学する」というフレームで毎年「進化してゆくマラソン大会」を目指しています。

マラソン中の至適ペースを科学する

マラソンでは30km以降ペースが著しく低下する「30kmの壁:hitting the wall」がしばしば観察されます。これには、エネルギー(糖質)の枯渇、筋のダメージなど様々な要因が考えられており、それらを誘発するのは、環境(気温)、事前のトレーニングとコンディショニング、レース戦略(ペース配分)、食事などがあげられています。この研究では、マラソンレース中の心拍数や走速度の変化を捉え、失速してしまったランナーに共通する特徴をつかみ、マラソンにおけるペース(最適なペース)戦略における示唆を得ることを目的に取り組んでいます。
第43回大会では、「つくばマラソン練習会」の参加者など118名を対象にして、本大会(フルマラソン)に加え、3週間前にハーフマラソンに出場し、両マラソンの心拍数やペース変化、体調やトレーニング状況を調査しました。その結果、予備的調査を行った42回大会に比べて、ランナーの失速率が小さくなりました。これには、当日の気温の差の影響が考えられ、気温によってペース戦略を変更する重要性が示されました。また、フルのゴールタイムはハーフのタイムの約2.2倍になりました。これもペース戦略を考える指針になると考えられます。今後、さらに分析を進めていく予定です。

第43回 練習会

※協力 : 筑波大学 体育系教授 鍋倉賢治

レース戦略を科学する

マラソンでよいパフォーマンスを発揮するためにはレース戦略(ペース配分)が重要です。一般的に、長距離・マラソンレースではイーブンペース(一定速度)で走ることが最適とされています。しかし、レース経験の少ない市民ランナーにおいては、自分の適性ペースを把握することは難しく、前半のオーバーペースの結果、後半失速するランナーも多く見られます。そこで、つくばマラソン全参加ランナーのビッグデータを解析し、マラソン成績とペース配分の関係の他、性別、年齢などの影響を明らかにします。第38回大会の全完走者のデータ解析の結果は以下のとおりです。

1)前後半のタイム(所要時間)変化率
図1は、全完走者(12,177名:男性10,030名、女性2,147名)のハーフ通過時点を境にした前後半のタイム(所要時間)変化率を示したものです。ゴールタイムが遅くなるほど変化率がプラスに大きくなっています。fig1_henkaritsu

見やすくするために、ゴールタイム別、男女別にまとめたのが図2です。前後半のタイム変化率を+10%以内を成功レースととらえると、女性ではサブ4.5のランナー、男性でサブ4のランナー(各平均値)までは、概ね「成功」していると言えます。

fig2_henkaritsuavg

2)年齢別ラップタイムの変化
図3は、5km毎のラップタイムの変遷を、年齢別に分けて示したものです。最もゴールタイムが速かったのは、35‐45歳群で3時間58分29秒でした。また全体に距離の経過に伴ってラップタイムが増大しますが、特に25歳以下の群の後半の所要時間の増大が顕著です。fig3_laptimeage

3)男女ゴールタイム別のラップタイムの変化
図4に、サブ3.5、サブ4.5、4.5以上の3群の5km毎のラップタイムを男女別に示しました。同じゴールタイムであっても、女性は男性に比べ後半の失速が小さいことが理解できます。
fig4_laptimetime

以上の結果から、25歳以下のランナー、男性ほど後半のタイム低下(ラップタイムの延長)が顕著であること、5時間以上かかるランナーは、すでに10km以降ペースが落ち始めることが明らかとなりました。

掲載したデータは38回大会のものですが、39回大会もほぼ同様で、雨の影響でスタート時のタイムロスが若干大きくなりました。

4)トレーニング量や夏のマラソンレースとの比較(42回大会)
以上を踏まえ、42回大会では、ランナーのトレーニング状況などを調査し、トレーニングとの関係、さらには北海道マラソンとの共同研究として、夏のマラソンレースとペース変化を比較することなどを企画しています。

※協力 : 筑波大学 体育系教授 鍋倉賢治

レース戦略を科学する

スタートを科学する

スタート時の混雑を緩和するため、「ウェーブスタート」を実施。スタート時間をずらすことで混雑が緩和でき、グロスタイムとネットタイムの差が縮小して、参加ランナーから高い評価を得ています。第35 回大会に3 ウェーブで初めて実施し、第36 回大会で4 ウェーブ、第38 回大会からは5 ウェーブに増やしました。一斉スタートと3ウェーブ、4ウェーブ、5ウェーブでのコース上での混雑具合、グロスタイムとネットタイムの差の比較については以下のとおりです。

<一斉スタート(34 回)と、3 ウェーブ(35 回)・4 ウェーブ(37 回)・5 ウェーブ(38 回)での比較>

5km地点における5分ごとの通過人数

※縦軸:通過人数(人)/横軸スタート(第35・37・38回大会は第1ウェーブのスタート)からの経過時刻(h:mm:ss)

グロスタイムとネットタイムの差

※縦軸:グロスタイムとネットタイムの差(h:mm:ss)/横軸:ランナーの記録レベル

※協力: 筑波大学 体育系教授 鍋倉賢治

ランニングフォームを科学する

マラソンにおいて効率的にペースを維持できるフォームを検討し、マラソンを楽しむランナーの方々へ有益な情報を提供するため、筑波大学とカシオ計算機の共同研究で開発された解析アルゴリズムを搭載した小型モーションセンサーを参加ランナーに装着してもらい、走っている間のセンサーデータを記録しました。第37回大会では91名、第38回大会では97名のランナーに協力していただき、多くのフォームに関するデータを収集することが出来ました。

第37回大会ではマラソンタイム別の結果を示しましたが、第38回大会ではマラソンの前半と後半ハーフのタイム比を基準に3グループに分けて示しています。比率が、0.49以上をA、0.46〜0.49をB、0.46以下をCとしました。幅広い記録のデータをグループ化するために前半5キロのデータを100%として規格化してグループの平均にしています。

※縦軸 : 最初の5kmに対する割合(%)
 横軸 : 距離(km)
※青 : A/オレンジ : B/グレー : C

スピードはグループ分けの結果をそのまま表しています。すなわち、グループAはレースの最後までスピードを維持しており、BおよびCは20キロ以降で徐々にスピードが低下しており、Cは大きく低下していることがわかります。

スピード

スピード

ランニングスピードは、ストライドとピッチの積で決まります。ピッチはどのグループもレース後半まで大きな変化はありませんが、ストライドはスピードと同様にBおよびCでレース後半に低下しています。このことは、マラソンの後半のスピードの低下はストライドの低下によるものであったことがわかります。

ストライド
ストライド

ピッチ

ピッチ

この要因を探るために、接地時間と上下動に着目しました。

ピッチは1歩の時間の逆数で(1歩の時間が長くなるとピッチが低くなる)、1歩の時間は接地時間と滞空時間からなります。
グループCもピッチは維持していましたが、接地時間は長くなっていることがわかります。このことは滞空時間が短くなっていることを示しています。上下動が小さくなっていることも示されています。ランニングではストライドは足を前後に広げた大きさよりも、空中を跳躍した要素が大きくなります。滞空時間が短くなるとストライドを維持することが困難になると考えられ、このことがスピードの低下につながったのでしょう。
一方で、グループBは上下動がレース序盤から小さくなる傾向がみられ、接地時間の増大もそこまで大きくありません。疲労を想定してレース序盤から終盤にスピードが低下しにくいランニングフォームがあることが示唆されます。今後、さらに詳細で、個別の検討が必要でしょう。

接地時間
接地時間

上下動
上下動

→第37回大会の結果はコチラ

※協力: 筑波大学 体育系准教授 榎本靖士
     カシオ計算機株式会社

景観を科学する

距離表示の色で気持ちをコントロール

1kmごとに掲出している距離表示の色は、フルマラソンにおけるランナーの状態や心理を考えて、色彩心理の面から配色を考えました。ランナーは5kmを一つの区切りとして意識しながら走ることが多いため、5kmごとに色を変化させ、より区間を意識して走ることのできる環境をつくります。

距離表示の色で気持ちをコントロール

表示物の色で必要な給水・給食物を

給水所の表示物は、給水・給食物(水、アミノバリュー、バナナ、きゅうりなど)から連想される色を選定し、視認性・識別性を高める効果を期待。
また、給食物の表示物は「給食を科学する」で選定された理由がわかるようにしました。

表示物の色で必要な給水・給食物を

のぼり旗で行きたい施設を見つける

多くのテントが設置されているメイン会場において、更衣室や手荷物預り所など、自分が行きたい施設がどこにあるかわかるようにのぼり旗を設置。また、施設名は、外国人のランナーでもかわかるよう、英語とピクトグラムで表現しました。

のぼり旗で行きたい施設を見つける※協力: 筑波大学 芸術系教授 山本早里

給水・給食を科学する

過剰な給水に注意!

マラソンに給水は欠かせません。給水不足はもちろんですが、過剰な給水も体調悪化の原因となります。正しい給水が出来ているかどうか、走る前と後の体重の変化で検証しましょう。

<正しい給水量のチェック方法>
 走行前の体重-走行後の体重=体重減少量
 体重減少量÷走行前の体重×100=脱水率

  • 脱水率が2%程度までの場合→水分補給量が適量
  • 脱水率が2%以上の場合→水分補給量が不足
  • 脱水率がマイナスの場合→水分補給量が過剰

 

給水量のチェック

給水量チェックコーナー

走る前より走った後のほうが体重が増えていた場合は、給水が過剰だった、ということになります。普段の練習の時も、走る前と後で体重を測って検証してみましょう。

体調に配慮した給食で完走しましょう!

コース上の給食は、走っている間の体調を崩さないよう配慮して提供しています。
エネルギー補給に欠かせない「糖質」ですが、血糖値を急激に上げるものは低血糖を招く危険性があるため、そうでは無い糖質(果糖など)を提供。また、疲労の原因となる「活性酸素」の発生を抑える「抗酸化物質」を多く含む食品も取り入れています。メープルシロップの糖は体内への吸収が早く、糖質代謝に必要なビタミンB1、B2を他の食材で補わなくてもエネルギーに変換できる「効率的なエネルギー補給」の給食としてレース後半で提供しています。
それぞれの表示物でそのポイントがわかるようにもしていますので、意識しながら食べてみてください。

<第43回つくばマラソンで提供する給食物>

43rd 給水・給食一覧※協力: 筑波大学 体育系 運動栄養学 教授・管理栄養士 麻見直美

応援を科学する

ランナーの活力となる「沿道応援」を活性化するため、つくばマラソンでは、今ではおなじみとなった距離表示の下の応援コメントを第30回大会から始めました。
また、地元の小学校・中学校の協力で、応援演奏を数ヵ所で行っています。
第37回大会のランナーアンケートでは、ランナーの皆さんが希望する応援の内容は応援してもらう場所について聞きました。今後、この結果を参考に、沿道応援の活性化に取り組んでいきます。

距離表示の下の応援コメント

サンプル画像1
サンプル画像2

 

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